「児童養護施設と企業とのパートナーシップが 子ども達の社会参画の精度を高める」(2022/2/3)
NPO法人フェアスタートサポート 代表理事 永岡鉄平さん
フェアスタートサポートでは、児童養護施設の子どもたちに対して、キャリア教育とアフターフォローの主に2つの支援をしています。現在日本には児童養護施設が約600施設、神奈川県内には約30の施設があります。約25,000人が児童養護施設でくらしていますが、要保護児童数全体は約45,000人を超えるとも言われています。
施設に入る子ども達の家庭背景としては、昔は、親の死亡や行方不明が多かったですが、今は児童虐待による保護が圧倒的に増えてきていて、全体の半数以上を占めるといわれています。児童養護施設の子どもたちの多くは、18歳になり、高校を卒業すると施設を出ないといけません。その後は就職するにせよ、進学するにせよ、自立が求められます。虐待が背景にある場合、親が実在するケースがほとんどですが、親との関係性が良くないため、金銭面や精神面で頼れるとはいいがたいものがあります。結果的に、多くの子ども達は18歳で親を頼ることなく自立することになります。
施設の高校生達は、高校卒業後、約3~4割が進学し、約6~7割が就職します。全高校生の進学率が約8割、就職率が約2割という現状と比較すると、進学率、就職率の割合がほぼ逆転しています。ここ数年で、施設の子ども達も給付型の奨学金を受けやすくなったため、以前のように進学するなら借金をしなければならないという状況は緩和しました。ただ、学費等は賄えても、日々の生活費(家賃含む)は自分で稼ぎださなければなりません。結果的に、学業とアルバイトの両立に耐えられない等の理由で、進学者の約3割が中退をしている実情があります。就職者に関しても、特にやりたいことがない高校生は、仕事の内容よりも、住み込みで働ける社宅のある会社、といった条件面優先の就職活動を行うケースが多く、入社後に仕事にやりがいを感じられない、などのミスマッチに発展し早期離職に至りやすい実情があります。中退や早期離職が起きてしまうと、正社員としての就職の難易度が上がり、結果的に多くの施設出身者が貴重な20代を非正規雇用、不安定な収入状況で生活をしている現状があります。いわゆるワーキングプアと呼ばれる状態です。
せっかくの貴重な若い可能性がもったいないことになっていて、この課題を解決すべく、就労支援を行っているのが当団体です。そして、これまで約10年の活動の実践から、課題解決に向け大事なポイントが少しずつ分かってきました。
テーマは「未然予防です」高校3年生の進路選択の時に、将来自分はこういった仕事をしてみたい、こんな社会人になりたい、こうした「目標」を持てた状態で進学や就職ができれば、途中で早期にドロップアウトすることなく、力強い歩みが実現しやすいと考えています。
そのために必要なのが、企業のサポートです。中学生や高校生時代に、地域の様々な企業とかかわりを持ち、仕事の見学や体験ができること、見学や体験を通じて各社の経営者や社員の方から励まされること、社会人として大切な価値観を吸収できること、こうした機会をしっかりと提供できることで、本人達の社会参画の精度が高まると考えています。このような機会を提供してくださる企業の情報を各児童養護施設へ届けるためのWEBサイト「フェアスタートパートナー」 https://fspartner.org/ も2021年に立ち上げました。引き続き、多くの企業とパートナーシップを結び、施設の子ども達の就労支援に努めてまいります。