会員卓話-1「社労士業界の現況」(2022/4/7)
杉山清二郎会員
会長の方針の中で、会員同士のコミュニケーションがコロナ感染の為、取れないと言うことで、新しい会員が、古参会員の職業等を知らない状況にあります。
これを解消するために、古参会員の職業や人となり等を卓話で、話して頂きたいとのことでしたので、今日は、私の職業であります、社会保険労務士の業務と業界の現況等を簡単に紹介いたしたいと思います。
私の職業は「社会保険労務士法(昭和43年6月3日施行)」に基づいた「社会保険労務士」です。昭和50年2月1日に社会保険労務士(社労士と言う)として、この武蔵野市で独立開業を致しました。
社労士は弁護士、税理士、司法書士等の他士業と比べ後発士業でスタートして50余年でありますが、どの様な業務を行っているのかと言う声をいまも聞きます。
じつは社労士と言う名前が知れ渡ったのは、第1次安倍内閣のときで、まだご存知の方も多いと思いますが平成19年2月の「年金記録問題」です、世間を騒がせ、大問題になりました。当時、約5,000万件の年金記録に問題がありと言われるなか、国会で安倍総理が最後の一人まで、第三者委員会を立ち上げ解決いたしますと答弁致しました、その際に第三者委員会は厚労省ではなく総務省の中に立ち上げ、弁護士、税理士等で解決すると話したため、そのとき私達、社労士が年金の問題は社労士が専門家だと声を上げたのが切掛けで社労士の名前が、世間に一気に知れ渡るように成ったのではないかと思っております。
少し横道に逸れますが、国会で議員の先生方も加人記録等に問題があって、それに対して、議員の先生方の面白い発言が思い出されます。
(例えば)
◎元総理はご自身の加人履歴について
「人生いろいろ・会社もいろいろ・社員もいろいろ」
◎「未納3兄弟」
3人の大臣が年金保険料を未納付
◆「社労士とデジタル化」
社労士の業務に戻りますと、
社労士の業務は「手続業務(独占業務)」と「人事・労務管理業務(専門家としての業務)」の大体二つに分けることが出来ると思います。
◇「手続業務」は労働社会保険諸法令に基づく
(1)申請書等の作成
(2)申請書の提出に関する手続代行
(3)事務代理
労働社会保険諸法令に基づく申請などについて又はその申 請などに係る行政機関等の調査若しくは処分に関し当該行政機関等対して行う主張若しくは陳述について代理すること
(4)紛争解決手続代理業務(特定社会保険労務士に限る)
(5)労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類等の作成
◇「人事・労務管理業務」
事業における労務管理その他労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく労働社会保険諸法令関する事項について相談に応じ又は指導すること
(1)「雇用管理」、「人材の育成」などの相談及び提案
(2)「人事管理」、「賃金制度の作成」、「労働時間管理」などの相談及び提案
(3)安全・衛生に関する相談及び提案
(4)経営労務監査
就業規則や法定帳簿等の関係書類の他、実際の運用につい てまで、監査を行うことで、企業の「コンプライアンス 違反」だけでなく、職場の「トラブルを未然に防止」をする
以上の二つの業務に就いて多くの社労士は収人の6割から8割の部分が「手続業務報酬」ではないかと思います、その様な中で「働き方改革」、「労働生産性の向上」等による、労働社会保険諸法令による申請及び諸届が省略可、電子申請また、マイナンバーカードによる健康保険証の代替等とデジタル化が進んでおります。
オックスフォード大学と野村総合研究所の研究で「AI (人工知能)による士業の業務の代替可能性」が発表(2015年)されております。
それによると社労士の「手続業務」が100%だとすると79,7%の部分が「AIにとって代わられる」となっております。
以上のことを考えますと、社労士も出来るだけ早く専門家業務にウエイトを移す必要があるのではないかと思います。
デジタル化(AI人工知能)の進行により、社労士の独占業であります「手続業務」が縮小傾向に向かっております。