活動報告

私たち東京武蔵野中央ロータリークラブは、さまざまな職業のメンバーが
その経験と知識を生かして社会奉仕活動や人道的活動に取り組んでいます。

「青少年交換プログラムについて」(2023/2/2)

卓話

東京東久留米ロータリークラブ 藤本誠一さん

青少年交換は国際ロータリーが公式に定めた青少年奉仕部門のプログラムであり、ロータリーの歴史の中で最も成果をあげているもののひとつと言われています。

1929年にフランスのニースで始まったとされ、1972に年RIの正式プログラム、1974年にRI常設プログラムの一つになりました。当2580地区においても、約60年の歴史を持ち、これまでに500人以上の高校生を海外に派遣し、ほぼ同数の高校生を海外から受け入れてきました。

グローバル化の時代と言われ、世界が狭くなり、留学の方法も多岐にわたっています。私たちロータリーの青少年交換プログラム以外の留学制度も、それぞれ成果をあげていることはご承知の通りです。しかしながら、ロータリーの青少年交換ほど全世界に認知され、成功を収めているプログラムは未だありません。それは青少年交換の目的を、語学研修など学生個人の能力の向上に置くのではなく、「母国の親善大使(小さな親善大使)」として、派遣先の国の生活、文化、歴史を学ぶと共に、自国(日本)の文化と歴史を広め、交流を深めることに主眼を置いているからです。学生たちはそれぞれの派遣先で学校に通いながら精一杯、文化交流の目的を達成するために努力を重ね、一年間の派遣生活を過ごして来ます。帰国報告会をお聞きになった方ならば、彼らの勢力的な生活ぶりに感銘を受けたことと思います。

この素晴らしいプログラムを継続し、私たちの大きな目的の一つである世界の恒久平和へ一歩でも近づいて行くには、ロータリアンの皆様とそのご家族の方々のご支援、ご協力が必要です。

クラブ会員の方々に、このプログラムを深く理解して頂きたく、本日は説明させて頂きます。

■地区委員会の役割

当地区でも地区プログラムとしてスタートしてすでに約60年程になります。その間に様々なシステム、手法が確立されてきました。それらを時代にあったものに修正しながら、地区内のクラブでの青少年交換が円滑に進むよう、お手伝いをすることが、私たち地区委員会の使命であると考えています。

■派遣学生の選考について

他地区ではロータリアンの推薦を条件としたり、クラブ単位で選考を行ったりしている例もあるようですが、当2580地区では完全な公募制をとっています。地区内の主だった中学校(中高一貫校に限る)、高等学校へ募集要項を配布し、応募条件を満たす希望者全員に、採用試験の受験資格を与えています。また地区内ロータリークラブの推薦のある場合は、地区外の学校へ通学している学生も応募することができます。

■派遣予定学生の研修

派遣予定学生として採用された学生は、一年間のオリエンテーションと呼ぶ研修を行っています。中でも夏休みのサマーキャンプ、春休みに実施するジャパンツアーでは、来日学生との合同の宿泊研修を行い、派遣前の国境を超えた友情を育む場となっています。

また当地区での研修の大きな特徴には、元RI理事である茶道裏千家前家元、千玄室氏並びに現家元、千宗室氏のご配慮により、市ヶ谷にある「今日庵」 にて派遣予定学生及び来日学生双方に、お茶のお稽古をつけて頂いていることが挙げられます。派遣生は日本独自の文化である茶道を身に付けます。派遣先ではこの茶道が文化交流の素晴らしい道具として大いに活用されていることと思います。一方、来日学生にとっては、日本文化を学ぶ最高の機会となっており、来日生に限り、許状まで頂けます。

■ローテックスのサポート

当地区では派遣国は選べないという事を事前に確認した上で、派遣学生を選考しています。

しかしこの条件は学生にとっては大きな不安です。現実の高校生の知識では、具体的に知っている外国を挙げさせると、ほんの数カ国になってしまうからです。そこで大いに活躍してくれるのが、ロータリーの青少年交換の精神を十分に吸収して帰国し、後輩の指導にあたってくれるローテックスの存在です。同じような不安と期待をもって出発し、それを乗り越えて1年の派遣生活を経験した彼らのアドバイスは、何にも増して派遣予定学生たちを勇気づけてくれます。また彼らローテックスはロータリー行事のサポートにも大変にカを注いでくれます。特に来日生が到着してすぐに行うサマーキャンプ、春に行われるジャパンツアーはローテックスの献身的なサポートがあって始めて成り立つプログラムといえます。ローテックスなしでは青少年交換プログラムは成り立たない、といっても過言ではありません。

■渡航手続きはすべて自分の責任で

当地区の特徴は、ロータリークラブ同士の交渉以外の手続きは、すべて学生自身の責任で行わせていることです。これらを乗り越えていくことで、派遣生としての自覚が形成されると考えています。

■スポンサークラブについて

スポンサークラブには、クラブ例会、各種行事に招いていただいております。またカウンセラーを選任していただき、学生たちにアドバイスいただくようにお願いしています。

学生たちの多くは、ロータリアンの子弟ではありません。また大人と子供の中間ともいえる年齢で、自信と不安の狭間で揺れております。彼らにロータリーの奉仕の精神、そして善意が人々を動かすことが出来るということを教えていただきたいと、スポンサークラブにはお願いしています。派遣先の国々で困ったことに出会ったとき、ロータリアンがいかに頼れるか、ということを彼らが知っていれば、派遣に対する不安は薄らいでいくことでしょう。また例会の席でスピーチのチャンスを与えていただき、大人の世界に徐々に慣れて行くよう、指導していただくこともお願いしています。また彼らが派遣先の公式行事で着用するロータリーブレザーの寄贈にもご協力いただいております。そして1年間の研修を終えて出発する時は、是非空港まで見送りに行っていただき、翌年帰国する時にも、出迎えに行っていただければ、派遣学生にとってスポンサークラブは、一生忘れる事の無い存在となるはずです。

■ホストクラブについて

ホストクラブをお願いするロータリークラブには、会員の皆様ばかりでなく、ご家族も含めて、大きな負担をかけることになります。来日する学生は、来日地区独自の基準で選考され、オリエンテーションを受けて派遣されて来ます。学校の制度、文化、宗教、すべてが日本とまったく異なる国からやってくる訳です。

私たち日本人の習慣からすると、随分おかしな行動、許し難い行動も少なくないと思います。しかし彼らは彼らなりに日本に馴染もうと、一生懸命努力をしているのです。もちろん「青少年交換のルールに従う」とサインして来日していますから、必要な時は厳しく指導していただきたいのですが、日々の生活面では、ある程度は長い目で見てあげて下さい。中には「日本なんかに来たくなかった。」などと公言してはばからない学生も過去にはおりました。そんな学生を日本好きにして帰国させれば、世界平和に少し貢献したように思えます。

■ホストクラブの選定について

ホストクラブをお願いするにあたっては、当地区在京60クラブに公平にご負担頂けるよう輪番表を作成し、この順番に従って選定しております。在京5分区それぞれのクラブ数の差異を吸収し、出来るだけ公平で、かつ各分区に配分できるよう工夫したものです。

また近年会員数の減少、高齢化などの理由から「ホストファミリーを見つけることが非常に難しい」とおっしゃるクラブが増えております。このことは我が国に限った事ではなく、先進国のロータリーに共通する問題のようです。しかしながら昨今の国際情勢を見れば、ロータリーの青少年交換プログラムの重要性は益々高まっていることは論を待ちません。ホストファミリーの選任は、従来、お引受け頂いたクラブにお任せして参りました。今後も基本的にはこの方式は変わることはありませんが、クラブの事情もあるかと思います。場合によっては、必ずしもロータリアンに限らず、派遣学生の家庭、あるいはローテックスの家庭にお願いすることも可能です。

■人頭分担金の配分について

これまで当地区では在京ロータリアン一人あたり年間3,000円のご負担を頂き、ホストクラブを引き受けて頂いたクラブに配分し、財政的な負担の軽減を図っています。

■ 2580地区の青少年交換状況

《2022~2023年度》

(交換人数)在京7名、沖縄1名、計8名(同数の学生を派遣し受け入れています。)

(交 換 国)アメリカ(2名)、フランス(2名)、ベルギー(2名)、フィンランド(2名)

《2023~2024年度》

(交換人数)在京9名、沖縄2名、計11名(同数の学生を派遣し受け入れる予定です。)

(交 換 国)アメリカ(2名)、メキシコ、ブラジル、ドイツ、フランス、オーストリア、ベルギー、スイス、フィンランド、タイ

■青少年交換プログラムの課題

◇ホストファミリーの確保が難しい  

分担の公平性の為、ホストクラブの輪番制(輪番表参照)を採用していますが、会員の高齢化や住宅事情により、ホストファミリーの受け手の確保が難しい傾向にあります。

《 対 策 》

①派遣経験者の家庭にホストファミリーを依頼→ホストファミリーバンク(仮称)の作成     

②地区として受け入れの方法を検討(Example:分区単位での受け入れ、マルチ化 等)。

◇SNSの普及に伴う問題      

・コミュニケーション力の欠如及び依存問題

会話の時間が減り、異文化交流とコミュニケーション不足を引き起こす可能性があますし、過度な依存は,睡眠不足等の健康上や費用負担の問題を起こしかねません。

・情報の瞬間的な拡散

良い情報も悪い情報も一瞬のうちに世界へ拡散してしまいます。危機管理の上でも学生だけでなく会員の投稿等につきましても注意喚起が必要です。

ロータリーにおける危機管理について

■危機管理とリスク管理

・危機管理・・・・危機が発生した場合に、影響を最小限にすると伴に一早く平常に復帰・回復させること。

・リスク管理・・・想定されるリスクが起こらないように、原因となる事象の防止策を検討し実施すること

■ロータリーにおける危機管理委員会設置の発端

2004年大阪国際大会において、青少年交換学生が性的虐待やハラスメントに遭っており、加害者の会員が服役中であり内1名は元ガバナーであることが報告された。オーストラリアではマスコミがこの問題を報道し反響を呼ぶとともに、RIはこの件で告訴され多額の賠償金を支払ったことが判明する。

■RI理事会による基本姿勢の策定

・2005年6月RI理事会は「青少年交換プログラム」において、各地区に下記の対策を要求する。

①地区の青少年交換プログラム実施者を法人化し、責任の所在を明確にするとともに訴訟等が発生した時のために損害賠償責任保険を付保すること。

②青少年交換プログラムに係るすべての関係者の過去の犯罪歴の調査を事前に行うこと。

③危機管理委員会を各地区に設置すること。

・2006年11月RI理事会は、ロータリーの活動に参加するすべての青少年のために安全な環境を作り、これを維持するよう努める。ロータリアン、その配偶者、その他ボランティアは、接する児童及び青少年の安全を考え、肉体的、性的、あるいは精神的虐待から身の安全を守るため最善を尽くしことを決定した。

「青少年と接する際の行動規範に関する声明」(ロータリー章典2.120.1)

青少年プログラム全般に関する「性的虐待およびハラスメントの防止」の方針(ロータリー章典2.130.2)

・「ゼロ容認方針」

 性的虐待やハラスメントは絶対に容認しない考えのもと、申し立ての報告があった場合、真偽や重大性、事件性の有無にかかわらず72時間以内にRIに報告すること。

■日本のロータリーでの対応

・2005年7月、「ガバナー青少年交換委員会」において各地区代表13名による「RI指針検討委員会」を設置。

・2006年5月、「全国青少年交換研究会」(長崎)においてRI指針に対する「日本原案」を策定しRIに提示。

 ①今後も「RI指針検討委員会」がRIの窓口となること ②各地区で「危機管理委員会」を設置すること

・NPO法人RIJYEC(国際ロータリー日本青少年交換委員会)の設置

2007年7月、青少年交換プログラムに参加する地区は法人化、賠償責任保険加入、危機管理委員会設置の

3条件を満たさなければならないとのRIからの通達により設立された。

・一般社団法人RIJYEM(国際ロータリー日本青少年交換多地区 合同機構)への改編

2018年4月、2017年1月にRIから「ロータリー青少年保護の手引き」が世界のガバナー宛てに配信された。この「手引き」を契機にRIJYEC理事会は、34地区ガバナーのご賛同と地区内クラブの了承を得て青少年交換プログラムを「多地区合同組織体として法人化」することにした。RIの常設プログラムに指定されている青少年プログラムすべてが包括される。

・事故、自然災害、病気、性的虐待、ハラスメントに対し包括的に対処する。